もし証券会社が倒産したら、株や現金はどうなる?

投資の基本知識-証券会社が倒産したらどうなるの?

株式投資を行うには、まず証券会社に口座を開設し、現金を預け入れ、株式を購入する必要がありますよね。
では、その証券会社自体が経営破綻した場合、同口座に預けている株式や現金、その他の資産はどのように扱われるかご存知でしょうか?

株式投資は元本が保証されていませんので、仮に投資先の会社が経営破綻に陥った場合は、同社が発行する株式の価値が0に近づくのは想像つくでしょう。証券会社が破綻した場合も同様に、価値は無くなってしまうのでしょうか?

たこ

本日は「証券会社が倒産した場合の投資者保護」についてまとめました。
株式投資をする以上、万が一、証券会社が倒産した場合の株式や現金の取り扱いについては事前に知っておいた方が良いですよね。

目次

証券会社が倒産した場合の2つの投資者保護

投資する者を保護するために「分別管理」と「投資者保護基金」という2つのセーフティネットが設けられており、万が一証券会社が経営破綻しても、投資家が証券口座に預けている有価証券や金銭は、保護されるようになっています。

  • 分別管理
  • 投資者保護基金

投資者保護①「分別管理」

分別管理とは?

投資家は証券会社に金銭や株式等の資産を預け入れることになりますが、証券会社では「投資家から預かった資産」と「自社が保有する資産」を分けて管理することが金融商品取引法で義務付けられています。このことを分別管理といいます。

投資家と証券会社自体の資産を明確に分けて管理している場合、もし証券会社が倒産したとしても、投資家の権利には影響を及ぼしません。つまり、証券会社が法律を守り、分別管理をしている限りは、投資家の財産も目減りすることなく返還されることになります。

たこ

分別管理をしていれば、投資家から預かった資産・金銭をもとに自社の社員の給与や地代家賃を支払うなんて事も起こり得ないですね。

 分別管理とは、簡単にいえば、金融商品取引業者等が顧客から預託を受けた金銭・有価証券について、万一金融商品取引業者等の経営が破綻した場合でも確実に顧客に返還できるように、管理することをいいます。そのためには、有価証券については、顧客の有価証券をその他の有価証券と区分して管理することが必要であり、また、金銭等については、顧客分別金信託として、信託銀行に信託することが必要です。これらの措置が講じられていれば、仮に金融商品取引業を営む会社が破綻に陥った場合でも、法律上、顧客から預託を受けた金銭・有価証券がそれぞれの顧客に返されることとなります。

顧客資産の分別管理Q&A(改訂第5版)

分別管理の仕組み(資産別)

分別管理の仕組み

① 金銭
証券会社に預け入れた金銭については、同じ金額を信託銀行へ信託しているため、信託法によって守られ、証券会社が破綻しても、全額返還される仕組みになっています。
② 国内の上場株式や債権
証券会社を通じて購入した株式・債権は、証券保管振替機構(通称「ほふり」)の振替口座にて電子的に管理されます。証券会社が破綻しても、ほふりで保管されている株式・債権には影響ありません。
③ 投資信託
投資信託は、「証券会社」「信託銀行」「運用会社」の3社が関わっておりますが、証券会社は商品の販売会社に該当します。信託財産は信託銀行にて分別管理されているため、販売会社である証券会社が破綻しても、影響ありません。

【要注意】分別管理の対象外となる取引

ここまでで顧客と証券会社の資産は法律で明確に分けて管理されていることが分かりました。しかし、分別管理の対象外となっている一部取引があるため、注意が必要です。

信用取引や店頭デリバティブ取引(先物取引・オプション取引等)などは分別管理の対象外となっているものがあり、例えば、信用取引では委託保証金や代用有価証券については分別管理の対象となりますが、建玉に相当する担保証券の金額や信用取引での評価益は分別管理の対象から除外されています。

(3)信用取引の建玉に相当するいわゆる本担保証券及び本担保現金は、分別管理の対象となりません。これらは、契約により金融商品取引業者が消費できる性質のものであるため、分別管理の対象から除外されているためです。

(4)信用取引の評価益については、分別管理の対象となりません。本担保証券の時価(又は本担保現金)と貸し付けた金銭(又は貸し付けた証券の時価)との差額により求められる評価損益が顧客から見てプラスの場合(本担保の価値の方が上回っている状態)であっても、本担保証券及び本担保現金が分別管理の対象にはならないため、その結果として顧客分別金の対象になりません。

顧客資産の分別管理Q&A(改訂第5版)のQ.72より抜粋

投資者保護②「投資者保護基金」

分別管理をしている限りは、投資家の財産も目減りすることなく返還される。

上記は分別管理の段落に記載した一文です。
「分別管理をしている限りは、…」という前置きが非常に気になりますよね。では、証券会社が法律を守らず分別管理を怠っている時は預けた資産はどうなるのでしょうか?
経営破綻にまで陥っているのだから、何が起こっても不思議ではない気もします。

分別管理がされていなくても1,000万円までは補償される

何らかの理由により、証券会社が投資家から預かった財産の全額を円滑に返還できなくなった場合、投資者保護基金という補償制度が設けられています。証券会社は、金融商品取引法にて投資者保護基金に加入することが義務付けられており、万が一の場合でも預けている資産の1,000万円を上限に補償されることになっています。

また、分別管理の徹底がなされていなかった場合以外に、破綻した会社による顧客資産の円滑な返還が難しいと投資者保護基金によって認定された場合にも補償が行われます。

  • 事故などにより顧客の資産を完全に返還できない場合
  • 返還に著しく時間が掛かる場合

投資者保護の仕組み

日本投資者保護基金HPより引用

投資者保護基金のサマリは以下の通りです。

  • 原則、一人あたり1,000万円を上限に補償される
  • 保護されるのは、国や適格機関投資家などのプロの投資家を除いた一般の投資家
  • 有価証券の値下がり等により発生した損失を補償するものではない

各証券会社の分別管理は?

各証券会社では分別管理についてどのように取り組んでいるのか、ホームページ等で情報が開示がされています。以下に主要な証券会社の分別管理に関するリンクを載せておきますので、興味があれば利用されている証券会社の取り組みについて確認してみてください。

投資者保護の仕組みをより詳しく知りたい場合

金融商品取引法の条文

分別管理は法令で定められていますので、一番確かな方法は条文を確認することでしょう。
金融商品取引法の第四十二条の四第四十三条の二で分別管理に関しての記載があるので確認してみてください。

金融商品取引法

リンク先にアクセスし、「Ctrlキー」「Fキー」を同時に押すと検索窓が出るので、「分別管理」と入力して検索すると該当の条文をスムーズに探すことが出来ます。

日本証券業協会の顧客資産の分別管理Q&A

日本証券業協会より「顧客資産の分別管理Q&A」の通知が出ていますので、分別管理の対象となる取引/対象外となる取引などより詳細な情報を知りたい場合は同Webページをご覧ください。97個のQ&Aが掲載されているため、ほぼ網羅されているかと思います。

顧客資産の分別管理Q&A(改訂第5版)

2022年8月21日時点では2021年10月26日通知の改訂第5版が最新となります。

投資者保護基金のホームページ

投資者保護の仕組みや補償対象となる取引/対象外となる取引などが分かりやすくまとめられています。

日本投資者保護基金

まとめ

たこ

本日は投資者保護の仕組みについて要点をまとめてみました。いかがだったでしょうか?

【証券会社が倒産した場合】

  • 分別管理と投資者保護基金という2つのセーフティネットがある
  • 分別管理は、投資家と証券会社の資産を明確に分けて管理すること
  • 分別管理をされている限り、投資家の財産は全額返還される
  • 分別管理がされていない場合でも、投資者保護基金で一人あたり1,000万円までは補償される

当サイトでは、具体的な銘柄や投資信託について記載することがありますが、個人的な見解であり、売買の推奨等を目的としたものではありません。免責事項をご確認の上、各商品及び取引のリスクを十分に理解した上で投資判断は自己責任で行うようにお願いいたします。

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